自由貿易区の開放拡大に関する政策レビュー
最近、上海自由貿易試験区が国際的な高水準の経済貿易ルールに結合し、制度型開放を全面的に推進するように、国家レベルから地方政府レベルまで一連の政策が講じられている。その中で、付加価値電気通信、バイオ医薬、サービス貿易の分野では、リスクベース度テストを強化し、中国の重要な分野における外資系企業の質の高い発展を促進するための重要な措置が導入された。
(写真・ 上海自由貿易試験区)
付加価値電気通信
2024年4月、「付加価値電気通信業務の対外開放拡大の試行活動に関する通知」が発表され、北京サービス業拡大開放総合モデル区、上海自由貿易試験区臨港新エリア・社会主義現代化建設先導エリア、海南自由貿易港、深セン中国の特色ある社会主義先行モデル区において先行試験を行うことが決定されました。これらの先行試験区において、インターネットデータセンター(IDC)、コンテンツ配信ネットワーク(CDN)、インターネットサービスプロバイダー(ISP)、オンラインデータ処理と取引処理、および情報開示プラットフォームと配信サービス(インターネットニュースや情報、インターネット出版、インターネット視聴、インターネット文化事業を除く)、情報保護と処理における外資の出資比率制限を撤廃した。
政策説明
上海自由貿易試験区の設立以来、付加価値電気通信分野における外資参入は、サービス業分野の開放拡大の重要な内容となっている。2013年、上海自由貿易試験区は付加価値電気通信サービスの対外開放試験プロジェクトを率先して開始し、2015年にはオンラインデータ処理と取引処業務(ビジネス型電子商取引)の外資比率制限がクリアーされ、一部の付加価値電気通信サービス施設の地域制限が緩和された。その後、これらの政策は中国のすべての自由貿易区と「中国内地と香港間の経済貿易緊密化協定」(CEPA)にも拡大され、付加価値電気通信事業の許可・認可手続きも簡素化された。
公表された情報によると、2024年9月末現在、会社登録地が上海である付加価値電気通信事業許可企業は11695社で、このうち付加価値電気通信事業許可を取得した外資系企業は3.75%の439社であった。現在、浦東新区の付加価値電気通信事業の許可企業数は上海市第1位であり、その内427社が外資系企業である。今回、付加価値電気通信分野の開放が試行拡大されるのは、中国の付加価値電気通信サービス市場の商品とサービスの種類を充実させ、市場供給を引き続き強化し、企業の活力を刺激し、規制制度、特別対応チームの建設をさらに改善し、中国における外資系企業の運営を支援することができる。そして、技術革新の新たな潮流の背景で、中国が世界でデータ資源と要素を収集し、配分する能力をさらに高めることもできる。これはまた、「国際高基準経済貿易ルールととの全面的結合による中国(上海)自由貿易試験区の高水準制度型開放の推進に関する全体案」で規定される、高水準のデジタル貿易ルールの実施と国境を越えたデータの流通の強化という要件にも呼応している。
バイオ医薬
9月8日、商務部、国家衛生保健委員会、国家食品薬品監督管理総局は同日に、「医療分野における開放拡大の試行業務展開に関する通知』及び『外商投資参入特別管理措置(ネガティブリスト)(2024年版)」を発表し、バイオテクノロジー分野及び全額出資病院分野における開放拡大を試行実施することを明らかにした。商務部、国家衛生保健委員会、国家食品薬品監督管理総局は、「医療分野における開放拡大の試行に関する通知」の中で、中国(北京)自由貿易試験区、中国(上海)自由貿易試験区、中国(広東)自由貿易試験区、海南自由貿易港を最初の試行地域に指定し、ヒト幹細胞、遺伝子診断および治療技術を試行範囲とした。また、北京、天津、上海、南京、蘇州、福州、広州、深セン、海南島において、外資による全額出資の病院(中薬関係病院、M&Aをした公立病院を除く)の設立を許可することも明記されている。新たに発表された「外商投資参入特別管理措置(ネガティブリスト)(2024年版)」では、外商投資参入制限のネガティブリストが31から29に削減され、「漢方薬錠剤の蒸し、炒め、焼きなどの調合技術の応用や機密の漢方薬処方製品の生産などに対する投資禁止」などの項目が削除された。これにより、製造業分野における外資投資制限がすべてクリアされた。ネガティブリストに規定されなかった分野については、内資と外資を平等的に扱う原則に従って管理し、外資系企業には内国民待遇を与える。
政策説明
全世界の研究開発チェーンの拡張と中国バイオ医薬産業の国際化加速に伴い、これらの業界の健全な発展と技術革新を促進するために、中国政府は細胞医療・遺伝子治療、医療機関分野における外資参入政策を徐々に調整しつつある。2022年10月、中国国家発展改革委員会が発表した「外商投資奨励産業目録(2022年版)」に「細胞治療薬の研究開発・生産(外資禁止分野を除く)」が奨励業種に組み込まれた。2024年2月、国務院総弁公室が発表した「高水準の対外開放の着実推進と外資のさらなる誘致・活用に関する行動計画」は、「北京、上海、広東などの自由貿易試験区は適格な外商投資企業を選定し、遺伝子診断・治療技術の開発と応用の開放を拡大するための試行を実施する」と提案した。今回通知の正式な発表と相まって、現在、一連の政策と措置は、中国が細胞医療とバイオテクノロジー分野で外資に段階的に開放するという前向きな姿勢を示している。
同時に、上海阿特蒙病院、上海永遠幸婦科病院など自由貿易区のプロジェクト先行試行の背景で、外資による全額出資の病院の試行範囲もさらに拡大されている。政策の方向性が明確になっているが、実施面では、試行の具体的な要件がまだ明らかにされておらず、今後政策のさらなる導入が期待されている。ただ、世界一流の成熟した投資ルール、規制制度を参照しながら、バイオ医薬品と外資系病院関連分野の開放レベルの継続的な向上を推進するという政策動向は揺るぎなく、中国国内CGTと大健康産業に新たな発展機会をもたらし、外資の中国市場参入の可能性をさらに広げるだろう。
サービス貿易
2024年9月,「国務院、サービス貿易の質の高い発展の促進に関する政策意見」(以下,「意見」と略記)が発表された。同「意見」では、越境サービス貿易のネガティブリスト管理制度を確立・改善し、資本、技術、人材、データなどの要素の越境流通を最適化すると規定している。対外開放プラットフォームの主導的役割を活かし、自由貿易試験区と海南自由貿易港の開放試行と圧力テストの役割を十分に発揮し、中国全国の越境サービス貿易の段階的な開放を着実に推進する。国家サービス貿易革新的発展モデル区を建設し、越境サービス貿易の市場参入、越境サービス貿易のフルチェーンの監督改善、リスク管理とモニタリング・早期警戒メカニズムの確立などにおいて、サービス貿易の全面的な改革開放のプラットフォームと質の高い発展の集積地を構築する。ルールのマッチングと規制調整を強化し、「地域的な包括的経済連携協定」(RCEP)の地域経済貿易取り決めにおけるサービス貿易開放の公約と関連ルールを質の高く実施するほか、「環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定」(CPTPP)などの国際的な高水準の経済貿易ルールに率先して結合させ、国内サービス貿易分野における改革を深化させる。
政策説明
中国が貿易大国から貿易強国へと徐々に変貌していく中、サービス貿易は産業の転換と高度化のための重要な手段と企業価値創造の源となりつつあり、新たな国際貿易の重要な構成要素となっている。同「意見」は、サービス貿易の質の高い発展のために、確かな政策的支援と制度的保障を提供するものである。早くも2018年、上海自由貿易試験区は越境サービス貿易のネガティブリストと実施措置を公布し、この分野の制度革新を率先して実施した。2024年3月22日、商務部は「越境サービス貿易特別管理措置(ネガティブリスト)(2024年版)」と「自由貿易試験区越境サービス貿易特別管理措置(ネガティブリスト)(2024年版)」を公布し、自由貿易試験区の越境サービス分野の拡大・開放を続ける一方で、初めて全国で越境サービス貿易のネガティブリスト管理制度を確立した。「意見」は、越境サービス貿易のネガティブリストを全面的に実施し、全国へと越境サービス貿易を段階的に開放するという自由貿易試験区の役割を果たすことを目的としている。
情報源:外聯発商務コンサルティング